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2012年9月15日 (土)

カール・ミュンヒンガー指揮・シュトゥッツガルト室内管弦楽団『古典派フルート協奏曲集』

Munchinger

カール・ミュンヒンガー指揮・シュトゥッツガルト室内管弦楽団『古典派フルート協奏曲集』LONDON POCL-2117

 このCDに納められているのは、伝ペルゴレージ、エマヌエル・バッハ、チマローザといった作曲家たちの作品なので、タイトルとしては正確とは言い得ないかも知れません。唯一、チマローザの作品だけは、古典派の装いを端正に身に纏っていますが、他の二人は、音楽史的には「前古典派」に位置づけられる作曲家であると言えるからです。
 「前古典派」とは、分かりやすく言えば、バロックから古典派への中間に位置する時代、作曲家の名前で言うなら、大バッハあるいはヘンデルと、モーツァルトやハイドンの間に活躍した作曲家の属する時代です。なお、ペルゴレージのフルート協奏曲2曲に関しては、彼の真作ではないらしいことが分かっていますが、誰の作品であるかは究明されていません。
 これらの作曲家については、また別の項目で取り上げることもあると思いますので、ここではおもに演奏者であるカール・ミュンヒンガーについてふれておきましょう。
 指揮者であるミュンヒンガーは、1945年にシュトゥッツガルト室内管弦楽団を結成し、バッハやビバルディなどのバロック音楽の復興に先鞭をつけました。その演奏は、軽快で衒いなく、誰の耳にも心地よく響くもので、大戦で疲弊した多くの人々の心の慰めとなったに違いありません。そんなミュンヒンガーの活躍がひとつの契機となり、戦後のバロック音楽ブームが到来したのです。私たちがよく知っている、イ・ムジチ合奏団やイ・ソリスティ・ベネティ合奏団なども、そのなかで頭角を現してきました。
 ミュンヒンガーの演奏スタイルは、様式的には両大戦間に定着した新即物主義の理念を更に洗練させたものであるように思えます。それまでのロマン主義的な音楽解釈への反動として、できるだけ楽譜に忠実に、そして主観を排して作品そのものの姿を浮かび上がらせようとしたのです。もちろんモダン楽器を使用していますが、ひとつひとつの音符を丁寧に処理していく、しかも音楽的に。芸術家という以上に、職人的とさえ言える生真面目さが伺えます。万人に受け入れられる心地よい音楽づくりが成功したのも、そのような姿勢の結果であると言えるでしょう。このようなミュンヒンガーの演奏については、没個性的、ただのBGMである、などといった批判があるのも事実です。また、大規模なオーケストラを指揮した録音などは、失敗作との評価も受けました。バロック音楽を職人的な丁寧さで演奏することを得意とするミュンヒンガーの音楽性からすれば、相性の問題がでてくるのも無理からぬところでしょう。しかし、このCDを聴いても伝わってくる、「音楽の愉しさ」を戦後の人々に印象づけたのは、何といっても彼の大きな功績であるのは間違いありません。様式的にも、ミュンヒンガーの存在があったからこそ、今日のオリジナル主義によるバロック音楽演奏の隆盛が準備されたといっても良いと思います。 

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