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2012年10月25日 (木)

ドラランド『王の晩餐のためのサンフォニー』

Laland_reyne

ドラランド『王の晩餐のためのサンフォニー』

ヒューゴ・レーヌ指揮、アンサンブル・サンフォニー・デュ・マレ harmonia mundi France HMC901337.40

 フランスの絶対王政を築いた太陽王ルイ14世の時代の音楽家といえば、その寵愛を傘に着てヴェルサイユの音楽活動を牛耳ったリュリが代表格と言えますが、ここに紹介するミシェル・リシャール・ドラランドも、ルイ王朝における重要な音楽家の一人です。ドラランドもまた、ルイ14世の信任篤く、その王女の音楽教師に任ぜられました。
 リュリは、台本作家モリエールとの確執にみるように、ヴェルサイユにおける自己の芸術上の影響力の強化のためには手段を選ばぬ策略家でした。様々な方法を使って、自分以外の音楽家や芸術家が宮廷内で強い影響力を持つことを排除しようとしました。しかし、ドラランドは、リュリによる妨害工作などを受けることはなく、王室礼拝堂の楽長としてその生涯を終えています。リュリは、ドラランドの才能が、宮廷内における自分の立場を凌駕するほどのものではないと軽く考えていたのでしょうか。おそらくそうではなく、ドラランドの主な活躍の場が宗教音楽であったことがその理由ではないかと思います。劇音楽家リュリはオペラ上演権の独占に固執しましたが、礼拝堂の仕事を主とするドラランドとの間には、うまい具合に分業が成り立っていたのでしょう。
 したがって、ドラランドのすぐれた仕事はおもに宗教音楽の分野に集中していますが、世俗の楽曲にも優れたものがあります。ここにとりあげるCD「王の晩餐のためのサンフォニー」もそのひとつです。名前のごとく、ルイ14世の晩餐を飾った器楽合奏曲集で、その性格からして、肩の凝らない、それでいてフランス古典音楽ならではの優雅な気品と愉悦に満ちています。冒頭の、壮麗なトランペットとティンパニによるファンファーレは、太陽王ルイ14世の堂々たる入場を想像させます。続く軽やかなエールは、贅沢な料理が次々と食卓に運ばれてきては並べられる様を描いているようで、その光景を思い浮かべるだけで豪華な気分になってしまいます。ジグやロンドー、パッサカリー。多才な舞曲楽章に彩られ、時折差し挟まれるカスタネットや鈴などの鳴り物も楽しく、時の経つのを忘れさせます。王の前では、この音楽に合わせ、華やかなバレも披露されたのではないでしょうか。この曲集は、何処から聴き始めても、何処で聴き終えても、最高の趣を私たちにもたらしてくれます。ルイ14世崩御の後、ルイ15世の御代までヴェルサイユ宮殿の晩餐を飾ったと言いますから、まさに宮廷雅楽の決定版といったところでしょう。
 このCDは、「アンサンブル・サンフォニー・デュ・マレ」と指揮者ヒューゴ・レーヌのデビュー作でした。レーヌは、リコーダー奏者でもありますので、指揮だけでなく、リコーダーでもこのCDの録音に参加しています。しっとりした滋味と、舞曲の特性をいかすメリハリのあるリズム感で、CD4枚組という分量にもかかわらず飽きることがありません。
 なお、現時点では、HMV、タワーレコード、Amazonいずれのカタログにも、ここで紹介した全曲盤は見あたらず、CD1枚に納めた抜粋盤(harmonia mundi France HMA1951303)のみとなっています。残念なことで、一日もはやく全曲盤の復刻がされることを望みたいと思います。

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